今日も朗らかな晴天が広がり、雲ひとつないランドルシア城の庭園には色鮮やかな花々が咲き誇り、どこからともなく甘い香りがしている。

「ジーク様、ここにおいででしたか」

一八〇センチの長身を見上げるにはいささか腰が曲がりすぎている老人が、城の庭園で佇んでいたジークに杖をつきながらゆっくりと歩み寄る。

「今日もいい天気ですなぁ」

こういう前置きをするときはなにか話があるときだ。いつも公務に追われて忙しないジークは、“ひとりの時間”の終わりに人知れずため息をついた。