クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

「少し眠ってはいかがですか? 寝ていないのでしょう? 私はここにいますから」

アンナは先ほどからジークが気だるそうに何度も重たい瞼を押し上げて、眠気に抗うようにしているのに気づいていた。身体が限界の悲鳴をあげているに違いない。しかし、ジークは首を振る。

「お前から目を離すことなどできない。いきなり私の目の前からいなくなって、あんな不甲斐ない思いは……もうしたくないんだ」

「え?」

「毎晩、部屋に戻るときにお前がいなかったら……と想像しては怯えていた。しかし、それが現実になり、私は己の甘さに悔いても悔やみきれない思いをしたんだ。後悔で押しつぶされそうだった。お前が連れ去られたとき、なぜ傍にいてやらなかったのかと」

そのときのことを思い出してか、ジークが表情を険しく歪めた。

「ジーク様……」

そんなジークの手を取り、アンナはにこりと微笑んだ。

「大丈夫ですよ。今度こそちゃんとここにいます。少しでも寝てください。強がりは禁物ですよ」

「なっ、決して強がりなどでは……」

ない。と言えないのは彼の素直なところだ。強がりと言われて心外だ。と言うような顔をしていたがアンナの笑顔につられ、ジークも頬を緩ませ笑みを返す。

「お前がそう言うのなら、その言葉に甘えよう。いいか、少しでもなにか異変があったらすぐに教えてくれ」

「わかりました」

アンナが頷くと、ジークは木に凭れながら腕を組む。そして安心したように目を閉じた。

(やっぱり、よっぽど身体が疲れていたんだわ……)

しばらくすると規則的な寝息が聞こえてきた。

(ジーク様は命を懸けて私を守ってくれた。だから、私も彼を守りたい……)

その思いを伝えるように、アンナはぎゅっとジークの手を握った――。