クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

アンナは心の中で思っているだけではもう抑えきれない想いを、ついに口にした。

「ジーク様、愛しています。私も、あなたが愛おしくてたまらない。国王様を愛してしまうなんて……この罪を、受け止めて頂けますか?」

ふたりの間にもうこれ以上の言葉はいらなかった。身体を引き寄せ合い、互いの視線を絡めると貪るような口づけを交わした。ジークの愛が芯まで満ちてくると、温かい気持ちになる。アンナもそれに応えようと、精一杯の愛情を注いだ。

「ジーク、様……んっ」

呼吸さえも許さないというような、情熱的な口づけに力が抜けそうになった。体勢が崩れそうになるアンナの身体をジークがしっかりと支える。

「アンナ、大丈夫か?」

「は、はい……」

乱れかかった息を整えると、アンナはジークの身体が異常に熱いことに気がついた。

「ジーク様、熱があるのではないですか?」

しっとりと汗ばんだ額に手をあてがうと、はやりジークは発熱していた。

「怪我のせいで熱を持っているだけだ。気にするな」

ラメアスの効果は多少の傷みを和らげてはくれた。しかし、完治するわけではない。
すると、なにを思ったのかジークは短く呻いて立ち上がろうとした。

「ジーク様!? 一体なにを……」

「私は大丈夫だ。それに、いつまでもここに留まっているわけにもいかないだろう?」

「待ってください! 動いたら傷口が開いてしまいます!」

慌ててジークの肩を押さえつけ、なんとか押しとどめる。

「まだ日が暮れるには時間があります。とにかく今は安静にして、後のことはそれから考えましょう」

ジークの焦る気持ちはアンナも同じだった。それに、早く城へ戻り適切な処置を施さなければ感染症にもなりかねない。ジークが諦めて木に凭れて深く息つくと、何もできないことへのイラ立ちが伝わってくるようだった。