クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

手のひらに、赤々とした血がべっとりとついている。そして指の間から血が滴った。アンナはしばらく放心していたが、ジークが背中に大怪我しているとわかるとハッと我に返った。

「はっ、無様だな……。お前をこの手に取り戻した途端に気が緩んだ。こんな傷、大したことない」

「そんなわけないじゃないですか! 早く手当しないと……」

今まで何事もなかったかのように平然としていたジークだったが、深手を負った傷にこれ以上耐えられなくなり、短い呻きをこぼす。

(こんな怪我を負っていたのにもかかわらず、私を追いかけて来てくれたなんて……)

なぜもっと早く気がつかなかったのかと後悔し、アンナはぐっと唇を噛み締めると、次第に意識が朦朧として体勢が保てなくなってきたジークを支えた。

「ジーク様、とにかく馬から降りましょう」

「……くそ」

情けない。とばかりにジークは馬から降り、アンナも続いて大きな大木の並ぶ影に身を寄せ、ジークの馬を木につなぎとめた。ジークは木に凭れるようにして浅い呼吸を繰り返している
ここは国境にほど近い場所、もしかしたら商人などの馬車が通るかもしれない。しかし、今のところ人が通る様子もなかった。助けを呼びに行くにしろ、ランドルシア城からは遠い。

「ジーク様、傷口を見せてくれませんか?」

「ここで脱げというのか?」

「緊急事態です」

渋々ジークが痛みに顔を歪めながら上衣を脱ぐと、均衡のとれた逞しい上半身が露わになる。

「これは……かなりひどいわ」