クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

「ジーク様がご無事でよかった……」

ようやく身体が安堵し落ち着きを取り戻す。ホッと胸を撫で下ろすと、ジークがアンナの額に軽く口づけた。

「私があの程度でお前を諦めると思うか? 所詮、ベアトリクスが向かう場所はわかっていた。国境を越えてタンブル王国へ向かう手はずだったと、捕らえたミューラン卿が白状したからな」

アンナは再びこの胸に抱き締められているという喜びに全身が緩んでいくのがわかった。

「あ、あの……ジーク様、ところでさっき言ってたことは、本当ですか?」

――私は! お前を愛している!

狂ったように回る車輪の音の中、確かに聞こえたあの言葉。アンナはもう一度確かめたくてジークを見上げた。

「お前を愛していると言ったことか? ああ、本当だ。そして、お前がここにいるということは、お前も同じ気持ちだということなのだろう?」

すっと目を細め、ジークはアンナを優しく見つめた。

「ジーク様!」

心の中で堰き止めていた様々な想いが噴き出して、アンナが勢いよくジークの背中に腕をまわした。そのとき。

「くっ……!」

予想外にも、ジークが苦悶に顔を歪めた。よく見ると、大きく肩を上下させて呼吸も苦しそうにしている。

「あ、あの……ジーク様? どうかされ……っ!?」

ジークの背中に回した手に、生暖かくぬるりとした感触がした。アンナは恐る恐る自分の手のひらを見て……目を疑った。

「ジ、ジークさ、ま……」