ひたすら走り続ける馬車の中。
「まったく、とんだ邪魔が入ったわね。でも、あなた泣かないのね、偉いわ。めそめそ泣いてる娘と一緒にいるなんて鬱陶しいだけだもの」
ベアトリスはふぅとひと息つくと、悲しみを堪えているアンナをチラリと見て言った。
「泣いたりしません。絶対に」
手を伸ばせばすぐに届きそうなところにジークがいたというのに、再び離れ離れになってしまった。
本当は今にも涙が溢れだしそうなくらい瞳が濡れていたが、アンナは毅然と言い放った。それにベアトリスに泣き顔なんて見せたくはなかった。ここではらはらと涙をこぼしてはそれこそベアトリスの一興に過ぎない。
荷台には輸出のための林檎やオレンジなどの商品が木箱に入っていくつも並んでいた。自分もこの商品と同じように売られるのだと思うとゾッとした。
ベアトリスはミューラン卿が捕まったというのに狼狽えるどころか、何事もなかったかのように平然としている。あの場でミューラン卿が拘束されることは想定内だったのかもしれない。
「まったく、とんだ邪魔が入ったわね。でも、あなた泣かないのね、偉いわ。めそめそ泣いてる娘と一緒にいるなんて鬱陶しいだけだもの」
ベアトリスはふぅとひと息つくと、悲しみを堪えているアンナをチラリと見て言った。
「泣いたりしません。絶対に」
手を伸ばせばすぐに届きそうなところにジークがいたというのに、再び離れ離れになってしまった。
本当は今にも涙が溢れだしそうなくらい瞳が濡れていたが、アンナは毅然と言い放った。それにベアトリスに泣き顔なんて見せたくはなかった。ここではらはらと涙をこぼしてはそれこそベアトリスの一興に過ぎない。
荷台には輸出のための林檎やオレンジなどの商品が木箱に入っていくつも並んでいた。自分もこの商品と同じように売られるのだと思うとゾッとした。
ベアトリスはミューラン卿が捕まったというのに狼狽えるどころか、何事もなかったかのように平然としている。あの場でミューラン卿が拘束されることは想定内だったのかもしれない。



