クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

剣腹で受け止めるが、じわりじわりとのしかかるその重さに、ジークが眉を歪める。アンナは固唾を飲んでその様子をただ傍観することしかできなかった。

ミューラン卿は手下たちとは違い、剣術を身に着けている。動きも断然違う。何度も剣を交え、ジークを攻め立てていった。押されているようにも思えたが、ジークはミューラン卿の一寸の隙をうかがっていた。

「グレイグ、ここは任せたわよ。あなたは彼を始末しておいてちょうだいね」

「言われなくとも――」

そのベアトリクスの言葉に、ミューラン卿が一瞬の隙を見せた。ジークはその好機にミューラン卿の手にしている大剣をはじき、素早く懐に踏み込んだ。そして思い切り肩から体当たりすると、ミューラン卿はのけぞって地面に倒れた。

「ぐあっ!」

「一瞬の隙が命取りだ。稽古でそう習わなかったのか? ミューラン卿の御手前もたいしたことはないな」

目と鼻の先に剣の切っ先を突きつけられると、ミューラン卿はごくりと喉を鳴らした。そこへすかさずソフィアがランドルシア兵を数人連れてミューラン卿を拘束した。

「ベアトリクス、アンナをこちらに渡せ」

「いやよ。まぁ、グレイグ、あっさり掴まってしまうなんて……まったく情けない男ねぇ」

屈辱にまみれた表情のミューラン卿をベアトリクスは小馬鹿にしたように鼻で笑った。そして、ジークがアンナへつま先を向けて近づいたそのとき。