クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

アンナは金切り声をあげて争いをやめるように懇願したが、目の前に繰り広げられた乱闘は混沌としていった。アンナの悲痛な叫びは誰の耳に届くことなく、剣がぶつかり合う金属の音、呻き声や叫び声だけが夜闇に響き渡った。

「まぁ、なかなかの余興ねぇ」

ベアトリクスが隣で呑気に笑っている。仲裁する気も毛頭ないようだ。

(ジーク様に、ジーク様になにかあったら……)

見ると、ジークは己の剣で手下の武器を弾き飛ばし戦闘不能にするだけで命まで奪うことを回避していた。敵とはいえ、自国の民であることを国王として心得ているのだ。

「無駄な殺生はしないということか……ジーク国王、だからあなたはいつまでも甘いというのだ!」

次々と倒れていく自分の手下を見兼ね、苦虫を噛み潰したような顔でついにミューラン卿が剣を鞘から抜いた。それを見たジークは鋭い視線を向ける。

「貴様の今までの行いはすべて調査済みだ。大人しく観念しろ! ランドルシアの貴族ともあろう者が、奴隷売買の元締めだったなどと……恥を知れ!」

ジークは剣を構え直すと、ミューラン卿に向かって声を荒げた。

「黙れ!」

眦を吊り上げ、ミューラン卿はジークめがけて突進する。そして、手にした大剣を振り下ろすと、ブンと唸りをあげて風を切った。

ギンッ!と激しくぶつかり合う金属音とともに火花が散る。

「くっ……」