クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

「アンナ! 無事か!」

視線の先にランドルシア兵を率いたジークが、松明の灯りに照らされて颯爽と現れるのを目にする。

「ジーク様!」

信じられない思いでアンナはジークの名を呼んだ。視線が合うとすぐさま駆け出して、その胸に飛び込みたい衝動に駆られるが、ベアトリクスに腕を掴まれてしまう。

「な、なぜお前がここにいるの?」

何事にも飄々としているベアトリクスが目を剥いて動揺している。しかし、その動揺は見る見るうちに怒りの形相に変わって、傍らにいるミューラン卿をギッと睨んだ。

「グレイグ、これはどういうことなの? 説明してちょうだい」

ベアトリクスに問い詰められると、ミューラン卿はチッと舌打ちをしてアンナに背を向けジークに立ちはだかった。

「ベアトリクス様、これ以上勝手はさせません!」

剣を抜き、ジークと並ぶように勇ましく続いて姿を現したのはソフィアだった。

「まぁ、ソフィア。あなたやっぱり私を裏切ったのね、何もなかったことにするって、あのとき言ったのに……」

「裏切る? 私とベアトリクス様の間に、そのような綺麗な絆はないのですよね? なにをいまさら」

ソフィアに鋭い視線を向けられると、ベアトリクスはなにも言い返せずふんと鼻を鳴らした。

「アンナの居場所の情報を伝達した相手が悪かったな。あのほら吹き大臣は今頃ランドルシア城の地下牢だ。水面下で貴様と繋がっていたやつの言うことなど、この私が真に受けるとでも思ったか」