「私が余計なことをしたせいで、リディアが怒られてしまったのかと思ったわ」
ローラはふるふると首を振って言った。
「万が一ベアトリクス様にでも知られてしまったら、それこそ大変なことになっていたかもしれませんが、見つけたのが私でよかったです」
ベアトリクスは非常な人間だ。子どもであろうが平気で残酷なことをしかねない。それを聞いてアンナはホッと胸を撫で下ろした。
「実は、私もリディアもご主人様に買われた奴隷なんです。あの子、まだ幼いせいで満足に仕事ができなくて……いつも罰で食事を与えられていなかったんです。ベアトリクス様がここへ来てから侍従たちへの処遇もひどいものです。あの人だけは……私も許せない」
ローラはどうすることもできない怒りを滲ませ俯くが、パッと顔をあげて真剣な眼差しをアンナに向けた。
「私の大事な妹に良くしてもらったというのに、何もできないのが心苦しくて……。あなたには辛い目に遭って欲しくない。けど、私ひとりであなたをここから連れ出すこともできないんです……ごめんなさい」
渡された小瓶は彼女の精一杯の気持ちなのだ。アンナは小瓶をぎゅっと握りしめ誰かに見つかる前に胸の谷間にそれを押し込んだ。すると。
「早くしないか、ベアトリクス様がお待ちだぞ!」
しびれを切らした侍従が先ほどより口調を荒げ、アンナを急かす。その声にハッとすると、ローラは小さく頷いた。
「きっと国王様があなたを助けて下さるわ。私はここでそう祈っています。どうかご無事で……」
「このご恩は一生忘れないわ。絶対にまた会いましょう。そのときは、私がとびきり美味しい食事を作っておもてなしするわ。もちろんリディアも一緒よ。約束」
(必ず生きて帰ってみせる。私に戻るべき場所がある限り……)
アンナは小さく微笑むローラを何度も振り返り、待ち構えていた侍従に腕を捕られるとそのまま裏口へ連れて行かれた。
ローラに託された希望を胸に秘め、ジークの姿を思い浮かべながら――。
ローラはふるふると首を振って言った。
「万が一ベアトリクス様にでも知られてしまったら、それこそ大変なことになっていたかもしれませんが、見つけたのが私でよかったです」
ベアトリクスは非常な人間だ。子どもであろうが平気で残酷なことをしかねない。それを聞いてアンナはホッと胸を撫で下ろした。
「実は、私もリディアもご主人様に買われた奴隷なんです。あの子、まだ幼いせいで満足に仕事ができなくて……いつも罰で食事を与えられていなかったんです。ベアトリクス様がここへ来てから侍従たちへの処遇もひどいものです。あの人だけは……私も許せない」
ローラはどうすることもできない怒りを滲ませ俯くが、パッと顔をあげて真剣な眼差しをアンナに向けた。
「私の大事な妹に良くしてもらったというのに、何もできないのが心苦しくて……。あなたには辛い目に遭って欲しくない。けど、私ひとりであなたをここから連れ出すこともできないんです……ごめんなさい」
渡された小瓶は彼女の精一杯の気持ちなのだ。アンナは小瓶をぎゅっと握りしめ誰かに見つかる前に胸の谷間にそれを押し込んだ。すると。
「早くしないか、ベアトリクス様がお待ちだぞ!」
しびれを切らした侍従が先ほどより口調を荒げ、アンナを急かす。その声にハッとすると、ローラは小さく頷いた。
「きっと国王様があなたを助けて下さるわ。私はここでそう祈っています。どうかご無事で……」
「このご恩は一生忘れないわ。絶対にまた会いましょう。そのときは、私がとびきり美味しい食事を作っておもてなしするわ。もちろんリディアも一緒よ。約束」
(必ず生きて帰ってみせる。私に戻るべき場所がある限り……)
アンナは小さく微笑むローラを何度も振り返り、待ち構えていた侍従に腕を捕られるとそのまま裏口へ連れて行かれた。
ローラに託された希望を胸に秘め、ジークの姿を思い浮かべながら――。



