クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

その娘の恰好を見てアンナは驚きで目を見開いた。なぜなら、娘が身に着けている服は、ドレスに着替えさせられる前に着ていた自分の服だったからだ。

「あなたは誰? なぜ私の服を着ているの?」

「私はあなたの囮です。ベアトリクス様の言いつけでここへ参りました」

娘は無表情で言い、小さく頭を下げた。

「囮ですって?」

よく見ると、娘の背丈はアンナと同じで栗色の髪も長さも同じだった。クセがかったところまでもそっくりだ。容姿はまったく別人だが、後ろ姿はまったく見分けがつかない。

「お屋敷の裏口に馬車を待たせてあります。廊下にいる侍従が案内しますので……」

娘は廊下で待機している侍従の目が気になるのか、何度もチラチラと視線をドアへ向けて落ち着かない様子だった。

「囮ということは……まさか、ジーク様がここへ? ジーク様の目を欺くためなの?」

問い詰めるように言うと、娘は戸惑いながら口を開いた。

「……実は今、このお屋敷はもうすでに国王様が率いるランドルシア兵に包囲されているんです。ベアトリクス様が抜け道を確保している間に、あなたとすり替わるように言われてきたんです」

「ジーク様が? 本当に?」

ジークが自分を救出に来た。それを聞いてアンナはくしゃりと顔を歪め、涙がでそうになった。

「おい、早くしないか!」