クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

「ふん、生意気な娘だ」

ミューラン卿は吐き捨てるように言うと、憤慨して乱暴に捕らえた顎を解放した。

「グレイグ、やめてちょうだい。私はこの子を気に入っているのよ」

「どうせ、新しい人形でも手にしたつもりだろう。ベアトリクス、今夜にでもここを立つぞ」

「え? 今夜ですって? もう行かなくてはならないの?」

ベアトリクスがつまらなそうに口を尖らせる。

「あまりここに長居はできない。ランドルシア国王も馬鹿ではないからな、ここを特定されるのも時間の問題だ。私は忙しい、では失礼する」

そう言うと、ミューラン卿は早々に部屋を後にした。

(このふたり、私を一体どうするつもり……?)

今夜にでもここを立つということは、またどこかに移動するということだ。もしかしたらランドルシア国外かもしれない。アンナの胸に不安が渦巻く。

「あらぁ、残念。もうここを出て行かなければならないなんて……慌ただしいわね。あなたはそれまでこのお部屋で大人しく待ってるのよ? いい?」

ベアトリクスはにこりと笑いかけるが、アンナはその笑みに応えることはなかった。

「こんなドレスを着させて、私を一体どうするつもりですか?」

ベアトリクスは自分の姿を鏡に映しながら髪型を整えて、満足にいくと「うん」と頷いた。

「どうするって? 見た目がよくないといいお値段がつかないもの、綺麗にしなきゃ。あなたは磨けば輝く原石よ、私が思った通りね」

「ね、だん……?」

アンナはそれを聞いて血の気が引いた。頭の中が真っ白になり、まさかという思いが身体を蝕んでいく。