クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

鏡越しにベアトリクスが満足げに微笑んでいるのが見える。何を考えているのかうかがい知れないその笑みに肌が粟立つのがわかる。

「いつまでもジークジークとあの男の言いなりになっている愚息なんかより、あなたみたいな器量のいい娘が欲しかったわ。ふふ」

そこへドアがノックされ、ミューラン卿が部屋に入って来た。

「あら、グレイグ。ちょうどよかったわ、見てちょうだい」

自慢げにアンナのドレス姿をミューラン卿に見せると、彼は表情を崩さずふんと鼻を鳴らした。

「こうしてコンラッドの娘に会うのは久しぶりだな。お前が幼少の頃、一度だけパーティで会っているんだが、覚えているか?」

「いいえ」

父を見限った相手だと思うとアンナは笑顔になれなかった。目も合わせずにそう答えると、
ミューラン卿がアンナの傍まで歩み寄る。すると、いきなり顎をクイッと捕られて無理やり上を向かされた。

「以前、王都でのことを国王に告げ口したのはお前だそうだな。当家も優秀な諜報員を雇っているんだ。私が知らないとでも思ったか? おかげでミューラン家は社交界から追放の処分を受けた。とんだ恥さらしだ」

「私は、見たままのことを言っただけです」

ミューラン卿が言っているのはマーカスを虐げたあの日のことだ。忌々しそうに睨みつけられるが、アンナは目を反らさず言い返した。ミューラン卿の眼差しはひどく冷ややかで侮蔑の色が透けて見えていた。