伸びた爪がアンナの腕に食い込んで身動きが取れなくなる。動こうとするとさらに食い込みが増してアンナは顔をしかめた。
「素直すぎるのも考えものよ。覚えておくといいわ。信じるから裏切られるのだと。それに約束なんてした覚えはないわ、牢屋に戻ってもいいかも……? とは言ったけど、勝手にそれを約束だと思い込んでいたのはあなたよ」
「そんなっ……ベアトリクス様、あんまりです!」
そのとき、今までびくともしなかったドアが突然開かれた。腕を掴まれながら振り向くと霧の中から姿を現したのは……。
「ベアトリクス様、馬車の準備が整いました」
曲がった腰を少し伸ばして髭を生やした老人がランタンを手にそこに立っていた。
(この人、誰?)
長めの白い眉毛の下にある瞳がじっとアンナを無言で見据えている。年老いてはいるが、威厳のある風格で、目が合うとまるで金縛りにあったかのように身体が動かなくなった。
「ロウ様!」
ランタンの灯りに照らされニヤリとしているのは、ランドルシア王国の大臣であり、ジークの側近でもあるロウだった。
「素直すぎるのも考えものよ。覚えておくといいわ。信じるから裏切られるのだと。それに約束なんてした覚えはないわ、牢屋に戻ってもいいかも……? とは言ったけど、勝手にそれを約束だと思い込んでいたのはあなたよ」
「そんなっ……ベアトリクス様、あんまりです!」
そのとき、今までびくともしなかったドアが突然開かれた。腕を掴まれながら振り向くと霧の中から姿を現したのは……。
「ベアトリクス様、馬車の準備が整いました」
曲がった腰を少し伸ばして髭を生やした老人がランタンを手にそこに立っていた。
(この人、誰?)
長めの白い眉毛の下にある瞳がじっとアンナを無言で見据えている。年老いてはいるが、威厳のある風格で、目が合うとまるで金縛りにあったかのように身体が動かなくなった。
「ロウ様!」
ランタンの灯りに照らされニヤリとしているのは、ランドルシア王国の大臣であり、ジークの側近でもあるロウだった。



