ソフィアは幼い頃から知っているし、この王国を守る同士だ。しかし、昔からベアトリクスから気に入られていたこともあり、彼女を信用していたことがもし過信だとしたら……。

「兄上。まさか、ソフィアを疑ってないよね?」

ふと、心を見透かすようにレオンに問われて、ジークはハッと我に返った。

「……そんなわけないだろう」

疑わしきは罰せず。ジークはそう自分に言い聞かせ、一瞬過ったソフィアへの疑念を振り払った。

「ベアトリクスが身を隠すとしたら……なにか心当たりはあるか?」

「……ごめん。母上のことは僕にもわからない」

そう問われたが、何も知らないレオンは申し訳なさそうに目を伏せた。

ベアトリクスはレオンの実の母親だ。しかし、彼女が囚人になってからというものレオンは長年面会さえも避けていた。彼の中でベアトリクスという母親は、もう他人も同然なのだろう。そんなレオンにベアトリクスの考えがわかるわけがないか、とジークは自嘲めいたため息をついて首を振った。