「どんな小さなことでも、お前が毎日を無事に過ごせていることが何よりの吉報だった。私は常にお前の身の安全を考え、いつかこの手で守るべく誰よりも勝るよう自らを鍛錬し鍛え抜いた。だからこれからはお前を私の傍で守らせて欲しい」

そう言ってジークはアンナの手をそっと掬った。

「ボブロが調理場を離れたいと申し出があったとき、私は決意したんだ“そのときが来たのだ”と」

「そのときが来たって……？」

するとジークはアンナの前に片膝をついた。思いもよらぬその行動にアンナは戸惑う。

「ジーク様？」

「この命に代えてもお前を必ず守り抜くと、その誓いを立てるときだ。お前に近づくべきではないという迷いもあったが……そうではないと気がついたんだ」

絞りだされた言葉は懺悔のようあり、救いを求める祈りにも思える。
ジークはまるで神々しいものでも見るようにアンナを見上げた。そして頭を垂れ、アンナに忠誠を誓うとそっと唇を手の甲に押し付けた。