ジークの語ったことをすべて否定するように、アンナは背中に額を押しつけて首を振った。

「それに、私……ソフィア様が言っていた枷の意味がようやくわかりました……」

自分のために負い目と罪悪感を背負って生きているジークをもう見てはいられない。だから、すべてを知っていたソフィアは敢えてそれを“枷”と言ったのだ。

(私、知らなかった……知らないところで、ジーク様が、こんなにも苦しんでいたなんて……そして、助けられていたなんて)

アンナは唇を噛み締め、今にもこぼれそうになる涙をぐっと堪えた。

「自分のせいで父が殺されたなんて、そんなふうに思わないでください。父は、ジーク様がこの国の次期国王にふさわしい方だからこそ、命を救ったんだと思います。きっと、ランドルシア王国を変えてくれると、ジーク様は……父の希望です」

「アンナ……っ」

勢いよくジークがアンナに向き直ったかと思うと、その身体を掻き抱いて胸に引き寄せた。包み込むようにアンナの後頭部に手を回し、頬を寄せる。