クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

裏路地でいざこざに巻き込まれてから一週間が経った。

ウィルもマーヤもその事情を知ると、『怪我がなくて本当によかった』『もうあんな場所に行くんじゃないよ』と忠告とともにアンナを気遣った。そんな優しさに気持ちが温まる中、もうマーカスに会うことはできないのだと、アンナは寂しく思えてならなかった。

――お前を愛でて、愛でて……愛でたおす許しだ。

アンナは気持ちを切り替えて仕事に取り組もうと積まれた皿を次々と洗っていくが、ふとしたとき、先日、弔いの湖でジークに言われた言葉を思い出してしまう。
今でも脳裏に焼きついているあの熱を含んだジークの瞳が、アンナの胸をときめかせる。

(ジーク様の愛でるって……どういう意味だったのかしら?)

(ボブロおじさんやウィルさんは私によくして可愛がってくれているけれど……そういうこと?)

まだランドルシア城に来てから間もない自分をきっと気にかけてくれるということなのだ。とジークに言われたとき、アンナはそう解釈した。

――そんな、許しなんて……滅相もございません。こちらこそよろしくお願いします。

アンナの答えにジークは満足げに笑んで、きゅっと手を握った。その手の温かさは今もこの手がしっかりと覚えている。彼のことを考えると、無性に胸がドキドキと高鳴って仕方がない。