何も言わずにジークはその場に腰を下ろす。

「別に、隠していたわけではない……と言えば、嘘になるが」

片方だけ曲げた膝に腕を載せると、諦めたようにため息をつく。アンナも続いて彼の横に座ってジークの言葉を待った。

「この王国に貧困層が増加したのは、私の父上である前国王が貴族贔屓をして貧しい者から目を背け続けていた結果だ。貴族からの支持を得て統制が保てていたようなものの、父上はマーカスのような人々を救う政策を怠った。だから国王になったとき、私はこの国を変えようと決めていた。しかし……」

暗闇の中で揺れる湖をじっと見つめながらジークは語った。アンナは一言一言聞き逃すことなく耳を傾けた。その表情は重く国王としての憂いを秘めていた。