クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

「自分を責めたりするな、貧しい暮らしは時に心までも貧しくなってしまう……そういう者たちを救うために私がいる」

「あ……」

気がつくと後ろから勢いよく抱きすくめられていた。背後からふわりと漂う香の匂いにドキッとする。

「泣くな。お前に泣かれると……弱い」

耳元で囁かれると吐息が項をくすぐって、妙な声が出てしまいそうになるのを唇を噛んで堪える。

「お前に伝えなければならないことがある。あの老人のことだが……」

ジークは抱きしめる腕に力を込めた。刹那、アンナはきっと良くない事だ……と悟って息を呑んだ。

「あの老人に、今後会ってはならない」

「……え?」

予想だにしていなかったその言葉に、アンナは咄嗟に身体を翻してジークと向かい合わせになった。そして彼を見上げると、ジークは眉を顰めて複雑な表情を浮かべていた。