クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

「私はずいぶん前から先に来ていた。それで、こいつを見つけた」

目の前に差し出されたのは一見雑草のような、細長い三つ葉のついた植物だった。

「これは……?」

「メイズだ。俗に眠り草とも言われている」

それを手に取ると、微かに甘い匂いが鼻をくすぐった。

「初めて見ました……」

眠りに効果のある植物は多くあるが、“メイズ”と呼ばれたものを見たことはなかった。アンナが興味津々に眺めていると、ジークが静かに笑った。

「それは満月の時にしか葉が開かないんだ。いつもは二つ折りに閉じていて見つけにくい、葉が閉じたメイズは効果がなく、ただの雑草だ」

「どうしてこれを私に?」

すると、ジークは長い睫毛を下げ物憂げな表情をアンナに向けた。

「今日のようなことがあった日の夜は、思い出してなかなか寝つけないものだからな、お前に嫌な思いをさせた」

「ち、違います! 裏路地に行ってはいけないと言われていたのに、軽率な行動をしたのは私です。それに……」

自省の念が身体の底から湧き上がって、それが取り留めもなくどっと溢れ出た。

「貧困層の人たちは、あの路上で自分なりの生活をしているというのに……。今日のことは、私がよかれと思ってサンドイッチを先週マーカスさんに渡したせいなんです。彼らに対して配慮に欠けていました。今後マーカスさんになにかあったら……」

瞳を濡らし、震える声を出し絞る。今にも泣き出しそうなアンナをジークは困ったように見つめた。