丘を下り道を外れて森の中へ入る。すると、湖が見える方向にランタンの小さな明かりが見えた。
(あれは……)
目を凝らすと、ぼんやりとした明かりがふたつの人影を照らしていた。
ジークに向き合うように立っている人影を認識する前に、ひと際大きな女性の声が耳に飛び込んできた。
「ジーク、私はあなたが心配なのよ! 国王が自ら慈善事業をする意味があるの? あなたは他にもたくさん公務を抱えて――」
「ソフィア、何度も言っているだろう。私は先生の意志を受け継ぐと誓ったんだ」
「そんな、そんなの……あの子に後ろめたさを感じているからでしょう? もう十分じゃな――っ!?」
アンナの気配に気づいたソフィアと呼ばれた女性が言葉を呑み込み、まだなにか言いたげにしながらもアンナのいる場所とは別の方向へと立ち去って行った。
(あの人は……)
遠目に茂みを早足で歩くその姿を見てふと思い出す。彼女はマーカスの遺体の傍に立っていた翡翠の瞳をしたあの女性だった。
(何を話していたのかしら……)
微かに「ソフィア」「先生」「うしろめたさ」などの単語は聞こえたが、鮮明に内容まではわからなかった。
(あれは……)
目を凝らすと、ぼんやりとした明かりがふたつの人影を照らしていた。
ジークに向き合うように立っている人影を認識する前に、ひと際大きな女性の声が耳に飛び込んできた。
「ジーク、私はあなたが心配なのよ! 国王が自ら慈善事業をする意味があるの? あなたは他にもたくさん公務を抱えて――」
「ソフィア、何度も言っているだろう。私は先生の意志を受け継ぐと誓ったんだ」
「そんな、そんなの……あの子に後ろめたさを感じているからでしょう? もう十分じゃな――っ!?」
アンナの気配に気づいたソフィアと呼ばれた女性が言葉を呑み込み、まだなにか言いたげにしながらもアンナのいる場所とは別の方向へと立ち去って行った。
(あの人は……)
遠目に茂みを早足で歩くその姿を見てふと思い出す。彼女はマーカスの遺体の傍に立っていた翡翠の瞳をしたあの女性だった。
(何を話していたのかしら……)
微かに「ソフィア」「先生」「うしろめたさ」などの単語は聞こえたが、鮮明に内容まではわからなかった。



