クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

日中は、雨が降るのではないかと思うくらい曇っていたが、夜になると分厚い雲は風に流され宝石のような星々と満月が夜空に瞬いていた。

寄宿舎の住人が皆寝静まった頃。
アンナはジークの使いが来るのを、何をするわけでもなくベッドの縁に腰掛けて、そわそわしながらひたすら待った。

(まるで逢瀬に行くみたい……って、何考えてるの私)

思わず錯覚してしまいそうになるのを、アンナは首を振ってよからぬ考えを払う。
すると、遠慮がちに部屋をノックする音が聞こえ、ドアを開けるとひとりの男が立っていた。

「ジーク様より湖へお連れするように言いつかりました。準備は整いましたでしょうか?」

彼もまた自分と同じ使用人であるのに、丁寧な言葉を使われてこそばゆさを感じた。

「はい。いつでも出かけられます」

よく見ると、その男は先日靴を持ってきてくれた使用人だった。

アンナは淡い水色のストールを羽織り、大きな音を立てないように寄宿舎を出た。