クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

アンナが羞恥で顔を真っ赤にしていると、頭にポンッとジークの手が優しく添えられた。

「あの湖の本当の名は“弔いの湖”といって、ランドルシア王国で亡くなった身寄りのない魂を送り出す神聖な場所だ」

弔いの湖はあの世と繋がっていると言われていて、罪人ではない孤立無援の魂を導く精霊が住んでいるという。

「あの辺りには珍しい薬草が生息している。今夜行ってみるか? 私と一緒ならば怖くはないだろう?」

アンナは思わぬジークからの提案に無言でパッと目を輝かせ、その表情を見てジークは噴き出した。

「お前は感情がすぐ顔に出るからわかりやすいな」

「……すみません」

まるで子どもみたいだ、そう思うと恥ずかしくなる。そんなアンナをジークはやんわりと目を細め、見つめる。

「それでは準備が整い次第、使いの者をよこそう」

「はい。よろしくお願いします。楽しみにしてますね」

「ああ、私もだ」

ジークの微笑みに応えるようにアンナめ満面の笑みを浮かべた。

ジークに笑いかけられると、柔らかいものに包み込まれるように不思議と心地がよくなる。

(なんなのかしら……私、変だわ)

彼を思うと心臓が波打ち、鼓動が高鳴りを覚えた。
しかし、アンナはまだ心の中に芽生えたその感情の正体を知ることはできなかった――。