クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

「……はぁ、そうか、ミューラン卿がそのようなことを」

アンナから話を聞いたジークは呆れたようにため息をついた。

「気の毒だったな。その傷、化膿しかけている。この薬を消毒した後につけるといい」
ジークが懐から軟膏の入った入れ物をマーカスに手渡すと、身体を震わせて恐れ多いと縮こまった。

「あ、いたいた。兄上」

そのとき、裏路地でのいざこざを聞きつけたレオンが走り寄ってきて、意外な場所にアンナの姿を見て目を丸くした。

「君がこんなところにいるなんて、もう騒ぎは収まったようだね」

呑気なレオンにジークが眉間に皺を寄せて横目で視線を向けた。

「お前の仕事はまだ残っているぞ、ミューラン一族に伝令に行って来い。貧困層の国民を虐げた罪で今後、城で行われる社交界パーティの出入りを禁ずる。とな」

レオンは腰に手をあてて、やれやれと首を振った。

「この国で貴族が権力で貧困を虐げる行為は重罪なんだよ、まぁ、ミューラン家は前々から気に入らなかったし、国王命令を受けて少しは大人しくなってくれるといいけどね。けど、噂好きな貴族にとってこの件はうまい酒の肴になるよ、きっと」

レオンに言い渡した伝令の意味にきょとんとしているアンナに軽く説明すると、レオンは部下を連れて颯爽とミューランの屋敷へと向かって行った。