クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

(あれは……)

見るといつの間にか男の背後に警ら隊が数人立っていて、その中央から一歩前に出て険しい視線を向けていたのは……ジークだった。

ジークは国王の証である深紅のマントを肩から下げ、鎖かたびらの上からサーコートを身に着けていた。そして腰には剣を携えている。予期せぬ国王の登場に皆が呆気に取られた。

「な、なんだなんだ?」

警ら隊に取り囲まれて逃げる隙もなく男が狼狽える。

「滅多に来ないからと言ってこのような行いをしていると、いつかは捕らえられるということを覚えておくんだな。牢屋にぶちこまれたくなければ、その手にしているものを今すぐ娘に返すんだ」

ジークの美しく蒼い瞳が鋭く光っている。睨まれれば背筋も凍るような威圧感にアンナはゾクッとした。

「わ、わかったよ。サンドイッチ、一個食っちまって悪かったな」

男はバスケットをアンナに押し付けると、そそくさとその場から逃げて行った。