クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

「彼女はわしの大切な客人だよ、あまり失礼なことを言わないでくれ」

マーカスの口調は丁寧で穏やかだったが視線は鋭く、そうこうしているうちに路上に座っていた数人の男らが興味本位にわらわらと集まってきた。

「そのバスケットの中身はなんだ? サンドイッチか? おい、じじい、この前もサンドイッチを食ってたよな。俺らは仲間だろ? 抜け駆けでいい思いなんかさせねぇぜ」

「抜け駆けってどういうことですか? 私がマーカスさんのために作ったんです。あなたたちのためじゃありません」

男の言い草についカッとなって言い返したが、威勢のいい娘だと男たちは小馬鹿にしたように鼻で笑った。

「そんな老いぼれじゃ、ろくに用心棒にならねぇぜ? つべこべ言わずにそいつを渡しな」

顎をしゃくってバスケットを渡すように強要されるが、アンナは首を振って拒否した。

「マーカスさんが仲間だって言うわりにはずいぶん横暴ね。これは渡せません」

曲がったことが嫌いなアンナが毅然と言うと、男はチッと舌打ちをしてバスケットを奪おうと太い腕を伸ばした。

「きゃっ」

力づくでバスケットを掴まれ、アンナが身を捩った瞬間、ブチッと取っ手が切れてしまった。