クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

(なんだか暗い所ね……大丈夫かしら?)

天気が悪いせいか、建物で陰っているせいか、まだ昼間のはずなのにまるで日が暮れたように辺りは薄暗く、思いのほか陰気な場所だった。初めて来る場所にアンナは、バスケットを握る手にぐっと力を込めた。

「わしの家はあの角を曲がったところだよ」

マーカスが指でその方を指したその時。

「よぅ、マーカス。見慣れない娘だな」

突然、背後から声がしてアンナが振り返る。

「珍しくいい女連れてるじゃないか。でも、じじいの相手にゃもったいねぇな」

体格のいい浅黒い肌の男がにやにやと笑いながら嘗め回すように見つめられ、アンナは眉を顰めて嫌悪を露わにした。着ている服も薄汚れていて、この男も裏路地界隈の住人だと悟った。