クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

「そう、ですね……」

アンナはその提案にひとつ気がかりなことがあった。
マーカスの住んでいる所は裏路地だ。行ってはいけないとわかっているが、マーカスは決して悪い人ではない。だからきっと大丈夫だという安心が、ふとよぎった懸念を打ち消した。

「わかりました。じゃあ、行きましょうか」

それに、このままここにいて雨に降られたらずぶ濡れになってしまう。自分は構わないがマーカスの身体に障ると思うと少しだけなら……とアンナはその申し出を了承した。

「今日のサンドイッチ、張り切って作って来たんですよ。お口に合うといいんですけど」

「お前さんの作る物はサンドイッチ以外でもきっとうまいはずだ。楽しみだよ」

そんな他愛のない会話を交わしながらアンナはマーカスに案内されて裏路地へ入って行った。