クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

(幽霊……なんて、嘘よ。きっとレオン様が私をからかってるんだわ)

がさっと木の葉が擦れる音がしてハッとする。

「っ!? だ、誰かいるの?」

咄嗟に振り向くがそこには誰もいなかった。胸を撫で下ろしてほっと息をつく。

(きっと獣の足音よ、そう獣の――)

そう思いたかったが幽霊の存在が脳裏にちらついた。なんど首を振って消そうとしてもそれがどんどん沸き起こり、アンナの恐怖を煽った。そのとき。

「きゃああ!」

再びがさがさっと音がして、視線の向こうに人影を見た気がした。

(やだ……怖い!)

確実に身に迫っているなにかの気配を感じ取ったアンナは、たまらずその場を全速力で走り去った。