クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

しかし、ジークの恩師はもうこの世にはいないはずだ。その恩師と同じように貧しい民のために無償で治療を施している誰かがほかにもいるということなのか。

「このサンドイッチ、とても美味しかったよ。最後のひとつは夕食にとっておこう」

つい考え込んでいると、マーカスがそう言って最後のサンドイッチを残してハンカチにくるんだ。

「あんた、これからわしらの仲間に会いに行かないかい? ここからちょっと歩いた裏路地にいつも集まってるんだ、気のいい連中だよ」

マーカスの言っていた“シュピーネさん”の存在が気になるが、アンナはマーカスの申し出に一瞬躊躇した。

「裏路地には絶対に行ってはいけない」そうボブロから何度も言われていたことを思い出す。実際、裏路地は治安の保証もないところだ。何か悪いことにでも巻き込まれたら……と懸念がこみあげた。