クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

ミューラン卿が無慈悲に言うと、使用人は老人を振り払うように突き飛ばした。その弾みで老人はよろめき、石畳に倒れると手に持っていたパンが転がった。老人がそれを拾おうと手を伸ばしたが、無残にも使用人はそれを踏みつぶしてその場を去っていった。

「おじいさん!」

それを見たアンナは無意識にその老人のところまで駆け寄っていた。歩く足を止めて見ていた野次馬は老人に手を差し伸べようともしない。老人はひどくやせ細っていて、服も破けている。その身なりから貧困層の民だとわかった。

「ああ、すまないな。大丈夫だ。はぁ、今日の食事が台無しだ」

見ると、パンはぺしゃんこに潰れてしまっていて、もう食べられるような状態ではなかった。

(ひどいわ、わざと踏みつぶして行くなんて!)