結局、駅まで、信号2つ分位の道を小走りで駆け抜けて、私と若菜は息が上がっていたけれど、武田は全く平気そうだった。

 電光表示板を見上げると、電車が来るまであと2分。確かに、走らなかったら間に合わない。

「てか、なんで遠藤まで走ってんの? 電車逆じゃん」

「そうだけど、なんか釣られちゃって」

 息を切らして、「はぁ、疲れた」と零す若菜を残して、私と武田は電車に乗り込んだ。

「また明日ね」

 若菜と手を振って別れて、武田の家との別れ道まで、一緒に帰った。

 私が今、告ったら……武田は……なんて答えるのかな?

 そう考えて、頭を振った。

 私、今すごく嫌な子だ。

 若菜が武田を好きなの知ってるのに。告るの、手伝うって約束したのに。そもそも、私が告ったってOKかなんてわかんないし、それを考えたら告白する覚悟なんて、全然ないし。

 八方塞がりだ。

 それを思い知った私は、2日後、若菜との約束通り夕焼け色の教室に一人戻ってきた。

 若菜から届いたメッセージは「ありがとう」の一言。

 私は、その最後に添えられた笑顔の絵文字に、5年越しの恋が散ったことを知った。