3年3組。


教室に入った私たちは、それぞれ自分の席に向かう。


すると、私のうしろの席に座っている女子が、お腹のあたりを手でさすりながら、うつむいている。


私は横から、彼女の顔をのぞきこんだ。


「どうしたの? 具合でも悪い?」


黒髪で、いつもポニーテールの彼女の名前は、灰谷 音(はいたに おと)。


音ちゃんとは、3年生になって初めて一緒のクラスになり、前後の席になった。


吹奏楽部に所属している音ちゃん。


あまり自分から話しかけるタイプではない、おとなしい性格の彼女。


そして、クラスの女子の中では少数派だけど、たぶん私と一緒で、音ちゃんもムーンライトには興味がなさそう。