* 病室を出ていったきり、伊原くんは戻ってこなかった。 退院の許可が出て、お父さんが病院の受付で退院の手続きをしている。 お母さんと一緒に病室を出た私は、廊下を歩きながら伊原くんの姿をさがしていた。 私が搬送されたこの病院は、白石さんが入院している病院だった。 きっと、伊原くんは白石さんの病室にいるんだと思う。 隣を歩いていたお母さんが、私の肩を抱き寄せる。 「風杏、キョロキョロして誰かさがしてるの?」 「え? あ、ううん」