そのとき、病室の扉が開いた。 私はパッと彼の手を離す。 私の両親は病室に入ってくるなり、私にぎゅうっと抱きついた。 「ふたりとも……くるし……くるしいよ……」 両親は私を抱きしめたまま離そうとしない。 そんな私たちを見て微笑んだ伊原くんは、そのまま病室を出ていった。 ――ふと、あの日のことを思いだした。 伊原くんの両親が亡くなったことを聞いた、あの夜のことを。