「澪。何を考えているの?」
当たり前に『澪』と慈しむように呼ぶ谷に何故だか涙が溢れそうになる。
それを飲み込んで口を開いた。
「借金の件も、副業の件も、助けてくださったのは感謝しています。
だからこれ以上、私の中に踏み込んで来ないでください。」
きっぱりと言い切って睨むように谷を見つめた。
谷はため息を吐いて、全く別のことを口にした。
「俺も言いたいことを言わせてもらう。」
先ほどまでの優しい雰囲気は影を潜め、手厳しい経営者の顔になった気がした。
「澪は双子のことやおじいちゃんのことを思って夢を諦めたと言いたいんだろう?」
双子や祖父を思って、というよりも現状が諦めなければならない状況に立たされたのだから仕方ないだけだ。
黙っていると谷は勝手に話を進めていく。
「双子のことで夢を諦めたなんて双子にとったら迷惑だ。
恩を着せられて身動きを取れなくするつもりなのか?
双子のことを言い訳に使うな。」
ひどい言われように目を見開いて谷へ抗議の気持ちを向ける。
「谷さんには、分からないですよ。」

