「債務計画書、見せてくれる?」

 視線は澪の手元へと移り、見せるよう催促された。

 ここで拒否したところで彼から紹介された弁護士だ。
 弁護士へ内容を確認することくらい彼にしてみれば造作もないこと。

 デスクに歩み寄って彼へ書類を手渡した。

 受け取った書類を捲る彼を盗み見る。
 いくら自分の会社のトップだからってこんなに間近で彼の顔を見ることはない。

 書類へと向けられて伏せられた瞳は長い睫毛に縁取られている。
 ナチュラルなダークブラウンの髪はゆるくカールしており、柔らかそうな毛質を感じさせる。
 肌は透き通るように白く、母方の祖父か誰かが北欧の人だという噂を聞いた。

 スッと通った鼻すじも意志の強そうな眉も彼の美しさを表すのに一役買っている。

 その上、長身で185は超えているのではなかろうか。
 それでも威圧感を感じさせないのは彼の柔和な雰囲気にあった。

 まぁ、その彼が昨日は凄みを利かせていたのだけれど。