「体、痛くないですか?」

 フローリングに背中をつけて、澪を抱きかかえる龍之介へ恥ずかしくなりながらも声をかけた。
 冷静になると恥ずかしかった。
 まだ明るい上に寝室でも何でもない場所で……。

「いいや。幸せ過ぎて痛いとか感じていられない。
 せっかくだから全部の部屋で試してみる?」

「もう。馬鹿っ。」

 龍之介の胸へ顔をうずめると龍之介はその髪に手を入れて弄んだ。

「せめて、お風呂は一緒に入らない?
 澪と入るの、夢だったんだよね。」

「夢って……。」

「洗いあっこしようよ。
 相川の家で出来ないこと全部をやっておきたい。」

「やっぱり……嫌、ですか?
 みんなで暮らすのは。」

 声を落とす澪に龍之介は微笑んだ。

「みんなで暮らすのもいいけれどって言ったはずだよ?」

「だって……。」

 彼は何も澪のような面倒ばかり背負い込むことになる相手を選ばなくても、自由に選びたい放題だ。

「自分を卑下しないこと」と言われ、普段は謹んでいるものの、たまに隠している不安とか色々がひょっこり顔を出す。