抱き締めていた手は澪の素肌をなぞって「ひゃっ」と色気のない声が漏れる。

「あ、あの。せめて窓を全部、閉めてから……。」

「俺は気にしないけど?」

 妖艶な雰囲気を醸し出し始めた龍之介に危機を感じて「私は気にするんです!」と押し退けて部屋中を再び歩き回った。

 本当に窓が全開でも気にしなさそうな龍之介に、何より久しぶりの甘い雰囲気に戸惑って足がもつれそうになりながらも窓を閉めて回った。

「ふう。」

 全部の窓を閉めて息をつく。
 久しぶりに来るマンション。

 初めは汚部屋で驚いたなぁと当時を思い出して感慨深くなる。

「ここにいたの。」

 客間の椅子に腰掛けていた澪を見つけて龍之介はドアにもたれかかっていた。
 目が合うと真っ直ぐに澪へと歩み寄る。

 澪は慌てて視線を下へと逸らした。

「龍之介さん。お疲れでしょうから、その、お休みになった方がいいんじゃないでしょうか。」

 椅子に座る澪へ覆い被さるように腰を屈め、肘掛けに手を置いた龍之介に澪はどうにも恥ずかしくて顔を上げられない。