野獣は時に優しく牙を剥く


 マンションに着くと籠っている空気を循環させる為、部屋中の窓を開けた。

 春の心地いい風が部屋を通り抜けて胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込んだ。

 澪がパタパタと動き回る姿を見ていた龍之介が近づいてきて、後ろから腕を回す。

 久しぶりの甘い雰囲気にドキリと胸が飛び跳ねた。

 そうだ。
 ここでは2人きりなんだ。
 そんな当たり前のことが頭を巡る。

「澪。働き者なのは感心するんだけど、いい加減、俺のことも構ってくれない?」

「りゅ、龍之介さん……。」

 上擦った声が出て恥ずかしくなる。
 それでも龍之介は甘い雰囲気を隠すどころか、顔を覗き込んでキスを落とした。

 突然のことにクラクラしてよろけそうになる澪を龍之介は抱き締める。

 相川の家で暮らすようになって、さすがにみんなの前でイチャイチャするわけにもいかず。
 一緒の部屋で寝ていると言っても、双子も同じ部屋。

 恋人らしい甘い雰囲気はないままの生活が続いていたのだ。

「双子やおじいちゃんとの生活も好きなんだけどね。
 俺、もう限界。」