すました顔で言われても困ってしまう。
 谷の寝室にはもちろんベッドは1つ。
 大きいベッドだとしても物理的に1つなのだ。

 否が応でも鼓動が速くなる。

「谷さんは良くても私はとてもじゃないですけど、眠れないです。」

「そう?なら、マッサージしようか。
 すぐに眠れるやつ。」

 マッサージという怪しい響きに身構えるとククッと笑われた。

「ここまで警戒心が強いのに、よくいかがわしい仕事をしようと思っていたよね。
 感心するよ。」

 谷に止められなければどうなっていたか分からない。
 愛人にして欲しいと谷にも申し出た。

 それなのに、何を純情ぶっているんだろう。

「谷さんが望むのなら……。」

 最後まで言い終える前に谷に体を抱えられた。
 一瞬、見えた顔は恐ろしく怒っているようだった。

「そこまで言うのなら、お言葉に甘えようか。
 お仕置きしよう。」

 乱暴にベッドへ下ろされた澪へ谷がのしかかる。

 先ほどまで夢見心地だった自分の馬鹿さ加減を呪った。