谷に口で敵うはずもなく、泊まることになった。
前は不可抗力で泊まったけれど、こんなに意識がはっきりしている状態はいくら「待つ」と言ってもらっても緊張する。
「おじいちゃんは俺から連絡しておくよ。
その間にお風呂へいっておいで。」
谷の言葉に甘えてお風呂をいただくことにした。
掃除はしたことがあっても湯船に入ることのなかった浴槽。
自分の家と違う広々とした浴槽に落ち着かなくて小さくなって浸かる。
キス……。
しちゃったんだよね………。
今頃蘇る抱きしめられた感触に唇に触れた感触。
冗談だとばかり思っていた谷の自分への気持ち。
それらを思い出すと胸がキューッと痛くなって、顔を覆った。
何度も何度もお湯をすくって顔を洗う。
頬を軽くたたいて「調子に乗らない。谷さんに迷惑をかけない」と呟いて浮かれてしまいそうな気持ちを正した。

