笑われてもこちらは上手く笑えない。
夢を諦めたことをひどく責められた気持ちになって、心が萎れているから。
谷はそんな澪の気持ちを知ってか知らずか、陽気に話を進めた。
「それは仕方ないことだ。
前にも言ったけどお金で買えないものがあることくらい分かってるつもりだ。」
お金で買えないものが何を示しているのかは分からないけれど、概ね澪の主張が受け入れられたのだと理解する。
しかし、次の谷の言葉で澪の主張は全く受け入れられないことが判明していく。
「澪の気持ちはお金では動かせない。
その逆も然り。
俺の気持ちも動かせないよ。」
谷の……気持ち………。
何が言いたいのか汲み取れなくて谷を見るとニッと口の端を上げた。
「俺、これからは澪の気持ちが俺に向くまで容赦しないから。」
「へ?
あ、あの、言っている意味が……。」
「澪の気持ちは勝手だけど、同じように俺も勝手にさせてもらう。
これからは本気で落とすから。」
「落とすって何を……。」
まさか。まさかね。

