「さすが吉井弁護士。と、言いたいところだが。」

 含みを持たせた言葉に澪は我に返る。
 美しい彼の顔に見惚れていました。なんて笑えない冗談だ。

 いや、冗談ではなくそれが普通、か。
 彼に見惚れない女性がいたら、その人はきっと相当の天邪鬼かイケメン嫌いの人だろう。

「当たり前だが、これでは返しても返しても利子ばかりで元本が減っていかない。
 会社で立て替えて完済させるから、相川さんは利息を差し引いた分、給料から天引きね。」

 スラスラと決められた台詞を話すように淀みなく言った彼に澪の方はギョッとした。

「だから、そこまでしていただく謂れはありません。
 助けてくれなどと頼んだ覚えはありません。」

 救済を申し出ている谷の方が眉尻を下げ、困ったような顔をする。

「素直になりなよ。困ってるんだろう?」

 借金はいつの間にか300万円に膨れ上がっていた。
 少しずつ別の金融会社から借り入れしていた債務は一本化するだけで利率を下げることができ、それだけで返済額はかなり減らすことができた。

 確かに債務計画書はよく出来ていた。
 返せそうな目処まで立ててもらえた。