「誰が最低男だって?」
「い、いやぁ…周りの噂、藍原部長はご存じかと」

私の言葉に、眉間にシワを寄せた藍原。

「噂って、なんの事だ?1週間、県外に居たんだぞ。そんなもの知るか」

「藍原部長がまだ、出張に行く前からですけど、知りませんか?」

私の問いかけに、首を左右に降る。

「藍原部長と専務秘書さんが付き合ってるとか、結婚秒読みとか。今回の出張だって、後々藍原部長が専務になるための仕事じゃないかって」

そう言った私は、視線を逸らすも、直ぐに戻されてしまった。

「アイツが言った通り、結婚して、子供までいる女だぞ?どうしたら、そんな話になるんだ?大体、俺はお前の事が好きだと、何度も言ってる筈だが?」

「…ごめんなさい」

素直に謝罪すれば、藍原は大きな溜め息をついた。

「渡辺」
「はぃ」

「お前、さっき言ったこと、一字一句忘れてないよな?」

「もちろんです、忘れるわけないじゃないです、か…ぁ」

『こんなに好きにさせといて』

と、言ったことを思い出した。

「明日香」

下の名前を呼ばれて、目を見開く。

「な、なんですか?」
「自分の言葉には、責任を持てよ?お前がその気なら、俺はもう我慢しない」

「な、ちょ、部…?!」

その後の事は、無我夢中でよく覚えていない。

けれど、藍原にこれでもかって言うくらい愛を囁かれ、キスの嵐を浴びた。