いや、戻れなかった。

エレベーターの前まで来て、足を止めた私はワナワナと震えた。

逃げていたって始まらない。

当たって砕けろ!

美人秘書がどうした?わたしなんか、可愛くないわ!

私はツカツカと二人が見えるところまで歩いていき、足を止めた。

大きく深呼吸して、一気に言葉を放った。



「藍原飛鳥!私への気持ちは嘘だったのか?!こんなに、貴方を好きにさせといて、今更全部嘘でしたとか…この、最低男!!!」


良い終えた私はスッキリして、でも、息切れして、二人を見る。

二人はポカンとした顔をしていた。

が、専務秘書は、藍原に視線を向けると、豪快に笑い出した。

「藍原君、最低男!!!だって!笑える!」
「なっ?!」

「えっと、貴女、藍原君の彼女?ごめんね?仕事で火急な事があって来ただけだから」

…へ。

「心配しなくても、私、結婚してるし、子供いるし」

…へ。…て?!

「藍原君、いや、コイツはただの幼なじみだから。間、後は、頑張れ、藍原君、」

専務秘書は藍原の肩をポンポン叩くと、さっさと車に乗って帰っていった。

…私の努力って。私の決意って。

…てか、藍原飛鳥は、超がつくほど、怒ってらっしゃる。

私は、エヘヘと、笑ってごまかすと、マンションの中に走って逃げた。

が、逃げられる筈もなく、あっさり藍原に捕まると、部屋まで連行された。