少しスッキリして溜め息をつくと、藍原の方に振り返ると、こわーい、こわーい、顔をしていた。

…ナンパは不可抗力だ。

私が悪いわけではない。

それなのに、藍原は怒った顔をして、私を見下ろしている。

「…ごめんなさい?」

どうして謝らなければいけないのか?そんな思いで、とりあえずそう言った。

「…藍原部長?…わっ」

ぎゅーっと抱き締められた。

結構苦しい。

「ちょっ、部長、くるし」
「お仕置き」

「なん、で、そんな」
「可愛いお前が悪い」

「だ、から、それはちが」

違う。私はかわいくなんて…?!!!

私は何度も瞬きした。

…だって。

…だって!!

…今、藍原は、私に、き、キスした!!!

「な、な、」

ボロボロボロ…

私の目から、大量の涙が落ちてきた。

流石の藍原もギョッとして、オロオロし出す。

「悪い、そんなに嫌だったか?」
「ファーストキス」

藍原は目を見開いた。

「ごめん、許可もなく勝手に」

…今までずーっと女子高育ちの私に、彼氏なんていたことなかった。だから、キスなんて初めてで。

驚いて。


…それなのに。



「なんで…」
「え?」

「なんで…嫌じゃないの?」
「…」

むしろ、嬉しいとか。

私の思考回路壊れたのかも。