藍原との食事は楽しかった。少食の事を知ってる藍原は、色んな物を、少しずつシェアしてくれて、二人でそれぞれの感想を言い合って。

やっぱり会社での藍原は怖くて苦手だが、それは上司としては当たり前の事をしているからで。

こうやって、プライベートの藍原はよく笑うし、よく喋る。

あの鉄仮面が外れたら、こんなにも愛らしい表情を沢山してくれる藍原に、親近感さえ湧く。

「…藍原部長」
「なんだ?」

「会社での鉄仮面はもう、外しませんか?それに、そのオールバックも止めませんか?藍原部長は本当は、とっても優しくて、愛嬌もあって素敵な人なんだってみんなにもわかって、怖がられなくなりますよ」

「…このスタイルを変える気は更々ない」


「何故ですか?」

「総務部の部長を見てみろ。優しくていい人なんだが、帰って部下から舐められてる」

…確かに。

「開発部の部長は、怖すぎて、誰も近寄りもしない」

…その通り。怖すぎて、仕事に支障が出ている始末だ。

「俺が一番ましだと思うが?」
「…ですね」

「…プライベートの顔は、好きなやつだけ知ってればいい」

…あ。それって。

思わず顔が熱くなるのが分かった。

そんな私を見て、藍原は軽くおでこを小突いた。

「自意識過剰」
「だ、だって」

藍原は私が好きだと言いました。