「…顔が赤いよ?」
私がちょっと笑って言うと、彼は口許を左手で隠して目線を反らした。
「酒のせいだ、バカ。」
「貴方、お酒で赤くなることなんかないじゃない。」
堪えきれず、私はクスクスと笑う。
口許から手を離した彼は、ちょっと拗ねたような表情をして、でもすぐに柔らかく微笑む。
「─まあいいさ、ナナが笑うなら。
俺、お前の笑った顔、本当に好きだ。
幸せな気分になる。」
吃驚して、ピタッと笑いが止まる。
からかうように言われたなら、軽く返せるのに。
本当に幸せそうな表情で言うから、私の顔はみるみる朱に染まる。
そんな私の頬に手を伸ばし、真面目な表情に変わった彼が言う。
「俺のそばで、いっぱいヤキモチ妬いて。
それで、俺の気持ちが伝わったら、いっぱい笑ってよ。
お前が笑顔になれるよう、俺、頑張るから。」